腎機能が慢性的に低下し、尿たんぱくが継続して出る状態を慢性腎臓病(CKD)と呼び、将来的に透析が必要となる腎不全に至ることがあります。慢性腎臓病になると、脳卒中、心筋梗塞などを発症するリスクも高くなります。腎臓はある程度悪くなってしまうと元の状態に戻ることが難しいので、新たな国民病としてその対策が勧められています。
腎臓は1日に150~200Lの血液をろ過して、尿を作り老廃物を排泄する大切な役割をもつ臓器です。その他にも、体にとって重要な働きをしています。
1)血圧を調節
2)体液量を調節
3)体内に貯まると悪いもの(尿毒素や酸など)を体外へ出す
4)血液を作るホルモン(エリスロポエチン)を産生
5)骨を丈夫にする(活性化ビタミンDを産生)
つまり、腎臓の機能が低下すると、様々な全身の不調が出現することになります。
腎臓の機能を示す指標としては、「GFR(Glomerular Filtration Rate)」がありますが、これは腎臓の中にある毛細血管の集合体である「糸球体」が1分間にどれくらいの血液を濾過して尿を作れるかを示す値です。クレアチニンを測定して、計算式でeGFRを算出してこの値を推定することができます。このGFRが1分間に60ml未満の状態が続く場合に、慢性腎臓病と診断されます。
また腎臓の機能が将来的に低下することを予測するために重要な指標が「尿たんぱく(アルブミン尿)」です。糸球体に負担がかかると、尿たんぱくが出現します。この尿たんぱくが3ヶ月以上続く場合も慢性腎臓病と診断されます。慢性腎臓病の原因としては、食塩の過剰摂取、喫煙、肥満、高血圧、糖尿病、加齢などが複合的に関係している場合も多いです。慢性腎臓病を予防するためには、食事や運動などの生活習慣も重要になってきます。
慢性腎臓病は、自覚症状がないまま進行する病気です。腎機能の低下に伴い、夜間の排尿回数が増える、むくみ、だるさ、吐き気や食欲不振などが現れてきますが、症状が出現する時点では、透析間近であることも少なくありません。定期的に腎機能を評価して、自分の腎臓の状態を把握することが重要です。
慢性腎臓病(CKD)、糖尿病性腎症(糖尿病性腎臓病;DKD)、腎硬化症、IgA腎症、ネフローゼ症候群、ANCA関連腎炎、間質性腎炎、多発性嚢胞腎、薬剤性腎障害、急性腎障害(急性腎不全)など
尿路感染症はおしっこの通り道である腎臓、尿管、膀胱、尿道において、なんらかの原因で病原体が侵入し炎症を起こす病気です。尿路感染症は大人だけでなく、子どもや赤ちゃんでもかかる可能性のある病気です。1歳頃までは男の子に多いですが、それ以降は圧倒的に女性に多くなります。これは、女性の尿道が太く短いため、細菌が外から侵入しやすいためです。一方、高齢者が発熱を起こす原因の主なものとして、肺炎と並んで尿路感染症が多くみられます。
これは、女性の尿道が太く短いため、細菌が外から侵入しやすいためです。一方、高齢者が発熱を起こす原因の主なものとして、肺炎と並んで尿路感染症が多くみられます。
・排尿時痛、残尿感、頻尿、尿の濁りなどの症状があります。
・発熱や腰痛などがある場合は、腎盂腎炎の可能性があります。
必ず尿検査を行います。発熱などがある場合は、血液検査も行うことがあります。
<尿検査のポイント>
・迅速検査:血尿、尿中白血球反応、細菌、亜硝酸塩などを確認します
・顕微鏡検査:尿中の白血球数、赤血球数、細菌を調べます
・培養検査:どんな細菌が原因となっているかを調べます
当院では、正確な診断と治療を目的に上記検査を行います。必要に応じて、治療後のフォローの検査を行うこともあります。
・膀胱炎は抗生剤や漢方薬の内服で治療します(治療期間:3~7日間程度)。
・発熱などの症状があり、腎盂腎炎にまで重症化した場合は、点滴による抗生剤を使うこともあります(治療期間:14日間程度)。
・尿路感染症の再発を予防するためには、外陰部を清潔に保つことと、水分を十分に摂取してトイレ(排尿)をなるべく我慢しないことが重要です。
尿路結石は尿路に結石が存在する病気のことをいいます。尿中の物質がなんらかの原因により腎で結晶化し、それが核となり凝集、成長を繰り返して結石となります。腎結石の場合は経過観察中、急激な増大傾向がある場合やサンゴ状結石が腎機能低下に影響する場合などに積極的に治療を考慮します。
尿管結石が尿の通過障害の原因になれば、腎に尿がたまり(水腎症)、疼痛や腎機能低下の原因となるため治療が必要となります。水腎症になると菌が繁殖しやすくなり、感染による腎盂腎炎やさらに腎から血中に菌が及ぶと敗血症をおこして重症化することがあり、結石に水腎症、発熱を伴う場合は緊急処置が必要になります。
血尿、背部痛、腰痛、側腹部痛などがあります。
尿検査、血液検査を行います。当院では、正確な診断と治療を目的に提携先の病院でCT検査を行っていただきます。
感染を伴わない10 mm以下の結石に対しては、結石による痛みをコントロールしつつ、水分摂取の励行や、排石を促進する薬によって自然排石を期待する保存的治療を行います。
結石の成分によっては尿をアルカリ性にして溶かす薬を使用する場合もあります。
10mm以上の結石に対しては自然排石の可能性は低いため手術などによる積極的な治療が必要なため、総合病院の泌尿器科と連携して治療します。
また症状発現後1か月以内に自然排石を認めない場合も積極的治療の介入を検討します。
前立腺は男性だけにある臓器で、膀胱のすぐ下に位置し、直腸の前方にあります。尿の通り道である尿道と精液の通り道である射精管が前立腺の中で合流します。前立腺液を分泌し、精子の働きに密接に関わっています。
前立腺肥大症は、加齢によりホルモンバランスが変化し、前立腺が徐々に肥大化し、尿道を圧迫して尿の通りを悪くする病気です。特に50歳以上の男性に多く見られます。前立腺癌を合併することもあるため、注意が必要です。
頻尿、排尿困難、残尿感、尿漏れ、夜間頻尿、排尿時の痛みなど。
血液検査(PSA値測定)、超音波検査、尿流量検査など。
薬物治療
①α1受容体遮断薬:前立腺肥大症に伴う排尿困難の薬として、最も多く使われます。前立腺平滑筋に作用し、尿道に対する圧迫を軽減します。内服後1週間以内で症状改善効果が出てきます。前立腺自体を小さくする効果はありませんが、継続投与における長期的な改善効果も示されています。副作用として、血圧低下、めまい・立ちくらみ、下痢、鼻づまり、射精障害などがみられることがあります。また、α1受容体遮断薬を内服していると、白内障の手術に影響することがあるので、眼科医に伝えることが必要です。
②5α還元酵素阻害薬:前立腺細胞の中でテストステロンをジヒドロテストステロンに変換する5α還元酵素の作用を抑えることにより、前立腺細胞の増殖を抑制し、その結果前立腺の大きさを30%程度小さくします。効果が出るのに3~6ヶ月程度かかるので、長期間の内服が必要です。前立腺が大きい場合や、α1受容体遮断薬による治療で効果が不十分な場合に併用します。
③PDE5(ホスホジエステラーゼ5)阻害薬:前立腺肥大症の最も新しい薬です。PDE5は、前立腺、膀胱、尿道に多く存在し、血管や筋肉を収縮させる働きのある酵素です。この酵素の働きを阻害することにより、血管を拡げ、筋肉を緩めることで、排尿障害を改善します。内服後1週間程度で効果が表れてきます。ザルティアの主成分であるタダラフィルは、ED(勃起不全)治療薬としても用いられています。副作用は、ほてりや動悸、血圧低下、消化不良、頭痛、筋肉痛、背部痛などがあります。またニトログリセリン内服中、不安定狭心症、重度の心不全、重度の低血圧・高血圧、心筋梗塞の既往歴が3カ月以内、脳梗塞が6カ月以内の方は使用できません。
手術治療
経尿道的前立腺切除術(TUR-P):前立腺の肥大部分を尿道から挿入した内視鏡で見ながら電気メスで削る手術です。その他にも、経尿道的レーザー前立腺核出術(HoLEP)などの手術があります。
※これらの治療は専門機関に紹介して行っています。
前立腺炎とは、前立腺の中で炎症が生じた状態で、細菌が前立腺に感染しておこる「細菌性前立腺炎」と細菌がない「非細菌性前立腺炎」があります。30-40代の男性に多い前立腺の病気です。
※慢性前立腺炎の原因は(細菌感染以外で)?
長時間のデスクワーク、長時間の乗り物での移動、自転車・バイクなど、前立腺の機械的刺激が要因となることがあります。疲労、ストレス、飲酒などもリスクとなります。
頻尿、残尿感、尿の勢いが弱い、排尿後尿が漏れてくる、排尿時痛、尿道の違和感、足の付け根や会陰部(肛門の前方周辺)の痛みや不快感、睾丸の痛みや不快感など様々です。勃起障害(ED)の原因となることもあります。
おしりから指を入れて前立腺を診察し、前立腺に痛みがあるかを確認します(正常の方は前立腺に痛みはありません。)
血液検査:前立腺のマーカーであるPSAや炎症反応などを調べます。
尿検査:尿中白血球の有無や尿細菌培養検査で細菌の有無を調べます。直近に性行為があれば、クラミジアPCR検査を追加します。
※前立腺に痛みがあっても尿検査で異常がないこともありますが、慢性前立腺炎(慢性骨盤内疼痛症候群)として治療します。
※超音波検査やMRI検査で評価することもあります。
抗生剤、α1受容体遮断薬、セルニルトン、漢方薬などで治療します。通常は、2~4週間で症状は軽快しますが、症状が完全に取れなくて長期間(数ヶ月単位)の治療が必要になることもあります。治癒と再燃を繰り返すこともあるので、日頃から日常生活について注意する必要があります。
・長時間のデスクワークは、1-2時間ごとに席を立つ。
・自転車、バイクはリスクが高いのでなるべく避ける。
・飲酒はなるべく控える。
・下半身をお風呂などでゆっくり温める
※前立腺炎治療中の性行為は?
細菌がいなければ、性行為は可能です。マスターベーションによる射精も問題ありません。
※前立腺炎があると不妊症になる?
前立腺に炎症があると、精液の成分が変化するため、精子の運動能が低下し、不妊症の原因になることがあります。精子自体の異常はないので、胎児への影響は心配ありません。
尿道や陰部の痛み・不快感・違和感、排尿時痛、発熱、陰嚢の腫大や痛みなど
血液検査:前立腺のマーカーであるPSAや炎症反応などを調べます。
尿検査:尿中白血球の有無や尿細菌培養検査で細菌の有無を調べます。
淋菌・クラミジアPCR検査:直近の性行為などがない場合は省略します。
尿道炎:原因菌によって異なります
・淋菌・・・セフトリアキソン1g点滴1回
・クラミジア・・・アジスロマイシン1000㎎内服1回
※これらは4週間後に治癒確認をした上で、性行為が可能と判断します。
・上記以外の尿道炎:抗生剤治療は7~14日間
細菌性前立腺炎:抗生剤治療は14日間
精巣上体炎:抗生剤治療は14日間
過活動膀胱は蓄尿(尿を溜める)という膀胱機能の障害です。膀胱が過敏になっていて過剰に反応して尿を出そうとするため、尿を溜めて我慢することが難しくなります。若い方から年配の方まで男女ともにみられますが、膀胱は加齢とともに伸展しなくなり、伸び縮みが悪くなるため、増加する傾向があります。その他の原因としては、肥満、喫煙、飲水過多(カフェイン、アルコール、炭酸飲料)などの生活習慣やストレスなどの心因性があります。50歳以上の男性では、前立腺肥大症により膀胱の反応が強くなっていることがあります。脳梗塞、脳内出血、パーキンソン病などの神経疾患があると、合併することがあります。
・尿意切迫感: 急に尿意を感じて我慢できなくなる。あわててトイレに駆け込む。一旦、尿意が気になり始めると我慢できなくなる。
・頻尿:頻回にトイレに行く(1日8回以上あるいは2時間以上持たない)。トイレに行っても尿はあまり出ない。
・切迫性尿失禁: 間に合わなくて尿が漏れてしまう。少量のことが多い。
※これらの症状から診断します。
過活動膀胱症状スコア(OABSS):問診票を使ってチェックします。
尿検査:膀胱炎など他の尿異常がないかを調べます。
残尿測定検査:残尿を調べます。
超音波検査:膀胱、前立腺を確認します。尿を我慢した状態でみます。
排尿日誌:排尿状態を確認します。1回の尿量は重要なデータです。通常200-300ml出ていれば問題ありません。
1)生活指導
過剰な水分摂取やアルコールやカフェインなどの摂取をひかえることで、頻尿や切迫性尿失禁の改善が期待できます。また、早めにトイレに行く、外出時にトイレの位置を確認しておくことで、切迫性尿失禁を防止しやすくなります。
2)膀胱訓練
膀胱訓練は排尿をあえて我慢しながら、少しずつ排尿間隔を延長することで膀胱容量を増加させる訓練です。具体的には、排尿計画を立て、短時間から始めて徐々に15分単位などで排尿間隔を延長し、最終的に2~3時間の排尿間隔が得られるようにします。
3)骨盤底筋体操
腹筋に力が入らないように膣や肛門を締めるようにする方法です。特に女性において有用と言われています。腹圧性尿失禁に対して広く行われている体操ですが、過活動膀胱にも有効です。
4)薬物治療
①抗コリン薬
膀胱の収縮を抑えて、尿意切迫感も改善する薬剤です。口腔内乾燥(口渇)や便秘といった副作用が見られることがあります。また閉塞隅角緑内症がある方には使用できません。
ポラキス、バップフォー、デトルシトール、ベシケア、ウリトス、ステーブラ、トビエース、ネオキシテープ(貼付剤)などがあります。
②β3受容体作動薬
蓄尿時の膀胱容量を増大させる薬剤で、尿意切迫感も改善します。口渇や便秘の頻度が低いと言われています。ベタニスとベオーバがあります。抗コリン薬と併用して使用することもあります。
亀頭包皮炎とは、男性の亀頭や包皮に、細菌やカンジダが感染して炎症を起こす病気です。原因により、細菌性亀頭包皮炎とカンジダ性亀頭包皮炎に分けることができます。大人だけでなく、子供にも起こりやすい病気です。糖尿病の方やSGLT-2阻害薬の内服をしている方は注意が必要です。
・亀頭包皮炎とは、男性の亀頭や包皮に、細菌やカンジダが感染して炎症を起こす病気です。原因により、細菌性亀頭包皮炎とカンジダ性亀頭包皮炎に分けることができます。大人だけでなく、子供にも起こりやすい病気です。糖尿病の方やSGLT-2阻害薬の内服をしている方は注意が必要です。
炎症が起こっている亀頭包皮を綿棒で擦り培養検査に提出します。 尿道炎が合併していることがあること、また先述したように亀頭包皮炎から隠れている糖尿病が発見されることがあるため、尿検査を行い白血球増加の有無、尿糖の有無なども同時に調べます。必要に応じて、血液検査も行います。
抗生剤とステロイドの混合軟膏などを1日2回ほど亀頭や包皮の炎症部位に塗布します。細菌が皮膚の深部に染み込んでいる場合や軟膏の抗生剤に耐性の細菌も多く、症状に応じて抗生物質の内服を併用することがあります。
白いカスが多量に付着していてカンジダによる亀頭包皮炎が疑われる場合、培養検査でカンジダなどの真菌が検出された場合には、抗真菌薬の軟膏・クリームで治療します。塗り薬で改善しない場合には抗真菌薬の内服を併用することがあります。
再発を防ぐ方法としては、毎日しっかり皮を剥いて亀頭包皮を優しく洗い流すことが重要です。タオルなどでゴシゴシすると細かい傷ができ、細菌が繁殖しやすくなるので、こすりすぎには気をつけましょう。
石鹸やボディーソープはよく泡立ててから使い、短時間の方がいいです(刺激性の強い石鹸は避ける)。また性行為の直後は陰部をしっかり洗い流すことが大切です。
再発を繰り返す場合には、仮性包茎の手術(環状切除術)をおすすめすることがあります。